「まあ、観光客の人は、歌舞伎町は楽しめないと思う。」いきなりだが、元も子もないというか、ある意味、核心から、彼のインタビューがはじまった。


手塚マキ。現在、6軒のホストクラブ、ほかにもバー形態の飲食店を歌舞伎町內で複數件経営する実業家だ。元々”カリスマホスト”として名を馳せたあたりが彼の歌舞伎町キャリアのスタートなだけに、 あるいは彼の事業の礎がホストクラブ(風俗営業)であることから、時折”區別”される立場ではあるが、その発信力や感性が多くの歌舞伎町”人”に認められ、 今では歌舞伎町商店街振興組合(このガイドブックの発行主でもある)の常任理事である。また、祭りなどでも裏方の中心を務め、名実ともに歌舞伎町の”顔役”となった。 夜の経済の観光魅力の活性化(ナイトエコノミー)が言われるようになった昨今では、歌舞伎町においてナイトメイヤー(夜の市長)は?という議論が起きたりするようになったが、 10人中9人が「それはマキ君でしょ。」と言う
そんな、歌舞伎町”夜の市長”(ナイトメイヤー)― 手塚マキ。そう呼ばれる彼に話を聞かないわけにはいかないだろう。

「そんなにエンタメの街じゃないし、そういうお店が増えていくのも表層であって、脈々と続いてきた歌舞伎町の魅力ではまったくない。」
2015年にコマ劇場跡地に、ゴジラヘッドで有名になった新宿東寶ビルが建ち、そこに大規模ホテルが基幹テナントとして入居。このあたりを期に、歌舞伎町の観光地化がはじまった。というよりは、利便性を中心とした滯在地域なので、観光拠點化といった方が正しいが。
「もしそれでも、(短時間で)どうしてもこの街のらしさを感じたいんだったら、一軒の店に行って、朝まで呑むしかない。それでしか、歌舞伎町を知れる方法ってないんじゃないかな。それでやっと入口を覗けるくらいじゃないっすか。」
言い換えれば、どこの店でも入口になる。ということになる。楽しむというより、ただネタを拾ってSNSで発信して、そのためのコストを図って、見合った楽しみで良かれとするでは、どうしたって想定內のものにしか出會えない。今の日本の観光は概ねそんな感じかもしれない。
「そいうことじゃなくって、(制御された日常という)『枠』の外の場所があることによって、自分が誰なのか、外から見れる。自分が誰なのかちゃんと意識して確認するわけじゃなく、 その無駄な行為とか無駄なお金を使うとか、何やってんだろオレはとか、そういった行動が、その先に、自分が誰なのか、自分が何ををしたいのかを客観的に考えるきっかけを與えてくれる。 そもそも自分自身が自分のことを、そうそうわけってるわけないじゃないですか。この街で過ごす時間が、それをもう一回客観的に考えることになる、歌舞伎町はそういう場所。ただ酒を飲むだけじゃなく、 ただ飲んでるだけで終わらないから意味がある。自分から何か起こそうとしなくていい。ただ飲みにくるだけでいいんです。

ただ、そういう、タガが外れた時間が、本來の自分がなんなのかっていうのを考えるきっかけになるわけですよ。歌舞伎町を理解するなら、ここは『枠から外れた場所』だというのがそもそも重要。」だと。 この日は若干酒が入ってたせいか、珍しく熱く語ってくれる彼がいた。
「この街に來て、はい、じゃあロボットレストラン行きましょ、とか、それって歌舞伎を観に行くのといっしょだし、歌舞伎町歩いてにぎやかだなって思うのは、ニューヨーク歩くのも一緒だし、 もっと行っちゃえば、ニューヨークの片隅だって、恵比壽の片隅だって、歌舞伎町的要素はある。飲み屋、ってのはそういうもの。それが、こう、あまりにも集合していて、濃くて、自分にとってもぴったり合う場所がある、 その可能性が、確実に世界中で斷トツに凝縮しているのがこの街。」なのだと。この言葉は、この街の『魅力』わかりやすく説明してくれてると思った。これだけ濃く凝縮されてると、街そのものが、自ら自浄や進化を繰り返していく、もはや生命體となっているからだ。

「ここで働いてる人間は、もっとコア。」
言ってみれば「”馬鹿”に生きられない。」

「人間なんだから、自分の生きたいように生きればいい。自由に。何かを抑圧して我慢して、つらいんです、なんて言ってる生き方なんておかしい。毎日同じように、同じことをして暮らしていくには、 相當鈍感でないとできない。何の疑問も持たず、これでいいやっていう自分、欲望を抑え込んで生きる、そんなことをしないのが、本來の人間らしさじゃないっすか。やむを得ず、社會で生きていかなくちゃいけないから、 節制があり理性がありルールがある。だから、自分がどうありたいのか、人間としてどういう人間なのか、向き合って生きるということを、おかしいと傍から言う方がおかしい。少なくとも、歌舞伎町で働いてる人間は、 自らの人間らしい部分に、生きられるわけですよ。生活のサイクルにできる。ただ実際には、この中に居たって、いつのまにかありんこみたになっちゃったりするやつもいるわけ。それじゃ一緒なんだけど。 ただ、大きな社會の力、通念、こうあるべきだみたいな力でありんこになってるのよりは100倍まし。少なくとも、気づいてて、もがいてて、抜け出すのが可能なありんこなんだから。 でも、そういうこの街を、今度は変わった街とかいってメディアが面白おかしく扱うから、狂った話になっちゃう。家族がとか、子供がいるからとか、ふつうは、とか言い訳はするけど、誰も正しい答えなんか言えないんですよ。 どっちが狂ってるのかと。それなら歌舞伎町の人間のほうが全然『人』として正しい。」

ここ數年の渋谷のハロウィンの盛り上がりは、”大人”社會からやや問題視されているようだが、なんで、あれを肯定する人たちが現れないんだろうと思っている私だが、歌舞伎町にしても、 実際は、『歌舞伎町』という”枠”があるから許容されているとも思う。底が抜けた先に可能性とか面白さあるのはわかるが、言うほど人は、自由やカオスを求めてなかったりもするからなあ??

インタビュアー/寺谷公一(てらたにこういち)

手塚マキ
プロフィール/1977年9月20日生まれ(42※取材時)埼玉県出身。

1997年より歌舞伎町でホストとして働き始め、一躍"カリスマホスト"に。當時はカリスマホストとしてメディア等でもひっぱりだこだった。
歌舞伎町の有名ホストらでボランティア組織『夜鳥の界』を立ち上げる。 新潟中越地震の際は、界に屬する4店舗がその日の売り上げから100萬ずつを持ち寄り新潟に寄付しに行ったことが話題になった。
2006年より、歌舞伎町のごみひろい活動をするボランティア団體「グリーンバード歌舞伎町チーム」立ち上げ、この活動は現在まで14年間続いている。

2017年に、歌舞伎町で唯一の書店『歌舞伎町ブックセンター』を立ち上げるも頓挫、しかし2020年再開予定。

現在、歌舞伎町にホストクラブ6軒、バー?スナックほか飲食店を8店舗、ほかにも美容サロンなどを経営するSmappa!グループの會長。 2018年には接客業で養った"おもてなし"のノウハウを活かして介護事業を開始している。
2017年より歌舞伎町商店街振興組合にて、理事長推薦により常任理事に(至現在)妻は、現代アーティスト集団のChim↑Pom(チン↑ポム)のエリイ。

著書に、『裏?読書』(2019年、ディスカヴァー?トゥエンティワン)『自分をあきらめるにはまだ早い 人生で大切なことはすべて歌舞伎町で學んだ』(2009年、ディスカヴァー?トゥエンティワン)がある。2019年10月より不定期でForbes JAPANにて歌舞伎町の主に経済について連載中。
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